胃潰瘍・十二指腸潰瘍について


実は身近な病気?「胃潰瘍・十二指腸潰瘍」、その症状やその治療法とは?

胃潰瘍・十二指腸潰瘍の概要を知る!

胃潰瘍・十二指腸潰瘍は、消化性潰瘍とも称されます。

かつては胃液中の塩酸やペプシンという物質が、胃を保護している粘膜を消化することによって、胃壁または胃の内部に潰瘍(ただれた状態)が発生する病気と考えられていましたが、今ではその発症プロセスは様々であると考えられています。


ピロリ菌によるものからストレスによるものまで、外的要因や内的要因のそれぞれから複合的に発症する疾患です。
原因から発症までのスピードはそれぞれですが、特に急なものを急性胃潰瘍と言います。

必ずしも痛みを伴う訳ではなく、人によっては発生箇所により痛みを感じない場合もあります。
こういった場合でも胃潰瘍自体は進行し、胃に孔が空く「穿孔性潰瘍」のような重篤な疾患に繋がる場合もあります。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍の症状と原因は?

胃潰瘍に罹患した場合、その自覚症状のほとんどは腹痛です。
特に、上腹部(みぞおち)の辺りに痛みを感じる場合が多いです。

この点で、食あたりのような下腹部の痛みとは区別することが出来るかもしれません。


腹痛にまで至らない場合でも、上腹部に違和感を感じることは多いでしょう。
吐き気や嘔吐と言った症状もあります。
胃潰瘍になり胃液が多く放出されると、胃粘膜とのバランスが崩れ、吐き気や嘔吐に繋がります。

他に明らかな症状として、出血を伴うものがあります。
吐血の場合、胃酸によって黒色をした血がこみ上げてきます。
下血の場合も同様で、黒色の血が便に混じって放出されます。これらは出血性胃潰瘍と称されます。

胃潰瘍の原因は多岐にわたりますが、その多くはピロリ菌によるものと、ストレスによるものです。
前者は外的要因で、後者は内的要因に相当します。

ピロリ菌による胃潰瘍の場合、感染経路は経口摂取となります。
ピロリ菌にかかると、程度はそれぞれですが慢性胃炎となり、その一部が慢性胃潰瘍などになります。

その他の外的要因としては、香辛料成分の強い食事や温度差が極端にある食事を過剰摂取した場合、ステロイドなど作用の強い薬剤を長期に渡って使用した場合、過度の喫煙・飲酒・カフェイン摂取などが挙げられます。

薬剤の影響という意味では、痛み止めのような消炎鎮痛剤が胃潰瘍の原因となる場合も少なくありません。

消炎鎮痛剤は、痛みの元となる物質を作り出す酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)の働きを妨げて、解熱や鎮痛、抗炎症作用を発揮します。

その作用としてCOX-2(炎症の原因となる酵素)の働きを抑えて、解熱、鎮痛、抗炎症作用を表しますが、同時にCOX-1(胃粘膜にある生体の恒常性を維持する酵素)の働きも抑えるため、胃酸の分泌が増えたり、胃粘膜の血流が悪くなったりして、これが胃炎や胃潰瘍(消化性潰瘍)を起こす原因になる場合があります。

次に内的要因であるストレスによる場合は、個人によってその程度は様々です。
イライラした状態が続いていたり、過労で睡眠不足だったり、過度の緊張や不安などからくる肉体的・精神的なストレスが胃潰瘍の原因となることは多く、急性の強いストレスは急性胃潰瘍の原因にもなっています。

十二指腸潰瘍と胃潰瘍は同じ病気?

十二指腸は、胃と小腸をつなぐ消化管です。

胃潰瘍と十二指腸潰瘍は同じ病気のカテゴリで扱われている場合が多いのですが、厳密には発生箇所が異なるので違う病気です。
ただ、発症までのプロセスがほぼ同じである点、十二指腸という部分が胃に限りなく近いという点、また診断するために用いられる方法が同じである点などから、まとめて説明してあります。

胃と比較して、十二指腸の粘膜は酸に弱いため、胃酸の分泌が多いと傷つきやすくなります。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍の診断方法は?

上に挙げた胃潰瘍・十二指腸潰瘍の症状は、他の疾病と共通する部分が少なくないため、具体的な診断は医療機関の検査によります。胃潰瘍・十二指腸潰瘍であるかその他の疾患なのかを鑑別するため、採血・胃カメラ・腹部エコー・内視鏡検査といった方法が用いられます。

単にみぞおちの痛みだけであっても、すい臓や肝臓の疾患の可能性もあるので、一つの方法だけでなく様々な検査を経て診断が下されます。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍の治療はどのように行う?

胃潰瘍・十二指腸潰瘍の初期治療は薬物療法が主となっています。

胃酸分泌を抑制する目的で、PPI(プロトンポンプ阻害薬)やH2ブロッカーが用いられます。
その他、胃の粘膜を増加させる薬剤や、血液を改善させる薬剤、組織修復を促進する薬剤など、防御因子改善剤が用いられます。

また、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因の多くはピロリ菌による場合が多いため、ピロリ菌を除菌する薬剤も使用します。

この場合、内視鏡検査が前提となり、胃内のピロリ菌を除菌する訳ですが、除菌後のピロリ菌侵入を抑制するものではなく、再発のリスクが有ることに留意は必要です。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍が進行して、概要で記したような「穿孔性潰瘍」のような重篤な疾患になってしまった場合は、投薬治療だけではなく手術が必要になってきます。

重篤な疾患に繋がる胃潰瘍は単にピロリ菌だけが原因でない場合も多く、また胃潰瘍は再発のリスクが比較的高い病気であるため、治療後の維持療法も重要になってきます。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍を予防することはできる?

ピロリ菌による胃潰瘍を防止するのは難しい面がありますが、人間ドックなどで定期的に胃の状態を検査しておくことは疾患リスクの減少に繋がります。

ピロリ菌の有無も人間ドックで診断することが可能なので、症状のないうちに調べておくのが得策と言えるでしょう。

ピロリ菌自体は、一度胃の中に侵入すると、除菌治療(薬剤)をしない限りその人の胃の中で生存し続けます。
侵入した時点で大なり小なり炎症を引き起こしているので、胃潰瘍になる前にピロリ菌を除菌するのも場合によっては必要なことかもしれません。
特に、上下水道の整備が進んでいなかった時代にピロリ菌の罹患リスクが高いというデータがあり、現代では50歳以上の方がその世代に該当します。

その他の要因による胃潰瘍を予防する方法としては、規則正しい自律した生活が挙げられます。

ストレス、また喫煙や過度な飲酒・暴食といった胃潰瘍のリスクは、不規則な生活環境において複合的に発生しがちです。
ストレスから喫煙がやめられず、過度な飲酒をしてしまう……といったようなパターンです。
胃潰瘍のリスクだけではなく、規則正しい生活や生活環境の整備は様々な疾患リスクを低減します。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍に関するまとめ

昨今の生活環境の欧米化やストレス社会の進展で、内的要因を発端にする胃潰瘍のリスクは高まっています。

居住環境(特に上下水道)の整備によってピロリ菌による胃潰瘍のリスクは抑えられている傾向にありますが、それを補填するかのように内的要因による胃潰瘍のリスクが高まっています。

胃潰瘍自体は適切な治療を行うことにより治療が可能な疾患です。
重篤化すると手術が必要な場合があるので、症状に心当たりがある場合は、速やかに医療機関を受診することをお勧めします。

症状は他の疾病や疾患と共通する部分も多く、主な症状であるみぞおちの痛みはすい臓や肝臓といった重要な臓器の疾患によってもたらされる場合があります。

ですから、症状が出た場合はそれら疾患のリスクをカバーするという意味も含めて、医療機関を受診しましょう。

また、胃潰瘍は再発のリスクが比較的高い疾患であり、罹患して治療が終わり症状が消えた場合でも、予後の観察はしっかりと行いましょう。